鏡に映る自分を見つめながら、約束どおりの時間に迎えにきてもらうことを確認して携帯を切る。

自分が頬を染めうれしそうに携帯を握り締めている姿を鏡の中に捉え、少し複雑な気持ちになった。

孝宏先輩を好きになったら辛いって…わかっていた筈なのに……。

鏡に向き直り、帯を締める。
仕上げに胸の下辺りの帯をパンと叩いて体に馴染ませる。
薄くピンクのルージュをひいてニッコリと微笑んでみると、鏡の中の自分はとても幸せそうに見えた。

好きになってもらえなくてもいい。

傍にいられるだけでいいじゃない。

あの笑顔を見ていられるなら……。

孝宏先輩の優しい笑顔を思い出す。

その笑顔が…大好き


ピンポ~ン♪


……ほら、優華笑顔をみせて。


孝宏先輩を最高の笑顔で迎えるのよ…。



++ 記憶のカケラ Fin ++