「優華、俺毎日おまえを迎えに行くから」


雨が桜を散らせた日。孝宏先輩は久しぶりに学校に出てきたあたしにいきなりそう言った。

「・・・・・・・え?」

「だから、毎日一緒に登下校するんだ。朝も迎えに行くし帰りも家まで送る。」

いきなりの事に言っている意味が良く飲み込めないあたしに、『わかったね?』と、念を押される。

「ちょっ、ちょっと待ってください。先輩の自宅ってどちらなんですか?」

「ん?俺、K市だけど?」

・・・・・・・全く反対方向じゃない

「無理ですよ。反対方向じゃないですか。」

「たかが駅を3つ戻るだけだろ?」

「3つって、降車駅通り過ぎて3つじゃないですか?自分の降りる駅3つも越えて迎えに来るなんて、何考えているんですか?あたしなら大丈夫です。」

そう言い張るあたしに先輩は初めて有無を言わさぬといった強い口調でピシャリと言った。

「大丈夫じゃない。噂ってのは広まるのが早いんだ。今度の事はもう、結構知っている奴もいると思う。優華には悪いけど、危険な事もあるかもしれない。」

先輩の言葉に息を呑む。

又、あんな事があるかもしれない?

先輩があたしの両肩を掴んだ。
真っ直ぐな綺麗な瞳でじっとあたしを覗き込んでくる。

心臓がドキドキして、顔が赤くなってくるのがわかった。

気づかれないように慌てて瞳をそらして、顔を伏せる。

・・・・・・孝宏先輩気づいてないよね?