「もう離れないから。あたし、ずっと孝宏といる。
今日からずっと孝宏と暮らす。
ずっとずっと離れない。
今夜だけなんて言わないで…
あたしを離さないで。
もうイヤなの。
孝宏があたしから離れて一人で遠くへ行ってしまうかもしれないと思った、あの時みたいな思いをするのは。
あたしをおいてひとりで逝かないと誓って。
あんな怖い思いはもう二度としたくないの。」

忘れようとしていたあの日の恐怖が蘇ってくる。

腕の中で力なく崩れていく孝宏の身体が、どんどん冷たくなっていった恐怖。

今この腕が温かいことを、もう一度確かめるように抱きしめて、込み上げてくるものを止める術もなく泣きじゃくった。