【安珍・清姫物語は延長六年930年頃、熊野詣に来た安珍という修験者が、真砂という地の庄屋の家で一夜の宿を乞うたことから始まる。
この庄屋の娘清姫が、若く美男であった安珍に一目惚れしてしまう。 その夜、清姫は安珍の部屋を訪れ恋心を打ち明けるが、安珍は「修行のために熊野権現に参詣する身ゆえ、下向の時まで待ってほしい」と断り、帰路にまた立ち寄ることを約束して、翌朝熊野へ旅立った】

―― あなたを好きです

【清姫は、安珍を待ち続けたが、安珍は一向に戻らない。不審に思い、熊野詣帰りの人に尋ねると、「別の道から帰るのを見た」と聞き、はじめて自分裏切られたと知る】

―― 何故私を裏切ったのですか

【髪を振り乱しながら裸足で安珍を追った清姫は、日高川の岸で安珍への情念の余り大蛇と化してしまう】

―― お願い私を愛して

【それに恐れを成した安珍は道成寺へ逃げ込み、僧たちに懇願し、鐘の中に隠れるが、大蛇となった清姫は鐘に巻きつき、火を吹いて鐘もろとも安珍を焼き尽くしてしまった。
その後清姫は入水し命を散らしたといわれる】

―― あなたを愛しています