「幸せとは」 湯気を出すコーヒーに手をかけ、磨きあげたように綺麗で、無愛想な無色のカップに注ぐ。 「恵まれた状態にあること」 辞書からそのまま出てきたような一行に、誠也らしさが滲み出る。 「意味わかんない」 「あいつのどこが好き?」 「だから好きじゃないって……」 誠也の瞳は曇っていた。 そして真っ直ぐあたしをとらえていた。 「春花、嘘とは、騙すために使うもの」 "騙す"というキーワードに反応する。