少しだけ思いだした。 まだ鮮明な、幸せの始まりの記憶。 「春花、あいつに惚れてんだろ?」 礼の吸っていったハイライトの香がくっきり残る、誠也が借りた個室の病室で、白衣を着た誠也が苦笑する。 「なんでそう思うの?」 「だって春花、目が違う」 整った唇を動かしながらゆっくりとコーヒースタンドに手をかける誠也。 「なにそれ」 「他の男を見る軽蔑する目をしてない」 「そんな目、してる?」 真っ直ぐに誠也を見つめる。 「俺を見る目もまた違う」