「着いた」
春花の腕をとってバイクからおろす。
「なんで?」
目の前に堂々と広がるのは、黒蝶のたまり場の倉庫。
「春花と一緒にいたいな」
優しく笑ってみる。
自分でも馬鹿だと思う。
女をこんなところまで連れて来て。
だけど"散歩"には行ってほしくない。
だからって病院に戻してもきっと春花はまた"散歩"に行く気がする。
バイクをいじって遊んでる奴や、話しをしてる奴、忙しそうに電話を取る奴、いろいろだった。
倉庫の奥のガラス戸を開けて春花を部屋に入れる。
「わおっ、礼が女連れて来たぁ」
ソファでごろごろしながら、デカイ声を出すのは、藍。


