「春花、お前治らねぇ病気なのか?」
黒いYシャツには、あたしが作った涙の染みがついている。
「……ひっく…ぅん」
礼は優しく笑ってあたしの頭を掴む。
「死ぬのなんてなぁ、一々怖がってんじゃねぇよ。怖いなら、強くなれよ。強くなれば生きてられっからよ」
たくさん指輪がはまっている手であたしの頭を撫でる。
「強く…って…?」
「俺等だってなぁ、いつ死ぬか分からねぇんだよ。そりゃあ、必ず明日死ぬって言われてるわけじゃねぇけどよ。明日死んでもおかしくねぇ世界なんだよ」
「………」
「暴走族なんて狭い世界かもしれねぇ。けど、その“暴走”に俺等は馬鹿みてぇに命賭けてるんだ」
「………」
何も言えなかった。
ただ、全く知らない礼のことを、少しだけ知った気がした。


