「なんで電話しないの?」
藍ちゃんの瞳はいつも、怖いくらいに澄んでいる。
そんな瞳を見ていると、嫌気がさす。
自分の汚さも映るように見えるから。
「残された側の気持ち、考えてないの?」
「藍、春花は生きてんだろ?」
「現実を見てよ。いつもそう、春花みたいな人はいつもそうなんだよね?…分からないの?春花」
「分かんない、だってみんな、もうすぐ死ぬ奴の顔なんかわざわざ拝みたくないでしょ?普通。だからなるべく人に会いたくないのっ。特に大切な人にはね。みんなの為でしょ。だから礼の側からも消えるはずだった。……でも礼は居てくれるんだもん、甘えちゃうの。だってひとりぼっちは怖いから」


