「親は両方、仕事で殆ど家にいないの。帰ってくるとき、必ず、お姉ちゃんと話すの。あたしとは殆ど目も合わせない。……たまに喋りかければ「お姉ちゃんに迷惑かけてない?」って聞くの」
礼は黙ってあたしの頭を撫でる。
「でもそんなのは辛くない、慣れてたから。……本当に辛いのは、苦しいときじゃないの。唯一の幸せが潰れるとき」
礼の目を見つめる。
「お姉ちゃんね、小学生になってちょっとしてから、変わったの。隣町の、名前も顔も知らないけど、好きな男の子が出来て、そこから、段々変わったの。まだ小さいのに化粧するようになったし、ちょっと年上のギャルと、遊び歩くようになった。お姉ちゃん可愛いし人あたりいいから、気に入られてたみたい…………そんなお姉ちゃんをみて親は、仕事にあんまり行かなくなった」
「春花、笑うな」
礼があたしの頬をつねる。


