俺は気がつけば
あの医者を探してた。
白衣を着て、黒髪をセットした長身の男の背中を見かけて
誠也って奴だなと思った。
「おぃ、お前、春花が何処だか知ってるか」
自分でもありえないくらい低い、相手を威圧する声が出た。
「さぁ」
それなのに
顔色一つ変えない男にブチ切れそうになる
「てめぇ、春花の居場所は何処だ」
こいつにキレるのはおかしいって分かってる。
悪いのは俺。
馬鹿な俺。
「春花を愛してるか?」
黒髪をかきあげて
不敵に笑う男の表情は少し
暗く濁っていた。
「あたりめぇだ」
「春花を一生愛する覚悟はあるか?」
それが何を意味する言葉かが分かる。
「あたりめぇだ」


