目が覚めれば

春花は背中を向けていた。

起きてるのかと確かめようとしたときに、一瞬にして釘を刺されたかのように心臓が痛む。

「…っ……春花っ」

「起きてたの?ん、何?」

病院にしては大きなベッドで
ゆっくりと落ち着いた声を出す春花。

「このアザ」

俺が少し躊躇しながら言った四文字に

春花は、一瞬にして黒で塗り潰した乱雑な一枚の絵を眺めるように

意味深く顔を歪ませる。

春花の背中には、青いアザが転がるように沢山、あった。

沈黙が流れて、焦点があったところで春花は唇を開く。

「……これは、あたしが風俗嬢をやる前の話し。体売るよりなにより屈辱な話し」

春花の顔に表情なんてなかった。