「礼、飛ばしすぎっ」
恐怖で足元が浮く感じがして、我にかえる。
「大丈夫、俺運転誰より上手いから」
耳元で囁かれる声はどこか甘ったるい。
「らっ、礼」
「ん?」
「運転に集中してよっ」
悲鳴に近いその文句は全く通じないらしく、
病院に着くまで続いた。
「春花ちゃーん」
「なに?」
病院のベッドで一息ついていると、礼の甘い声が聞こえた。
「お前何剣二に照れてんの?」
耳元で、ゆっくり囁かれ、ドクンと心臓が鳴る。
「照れてないよ、ただちょっとカッコイイなって思っただ……ん」
最後の"け"の文字を言い終わらないうちに唇が塞がれる。
「俺より?」
「そりゃ……礼の方が…んん……カッコ…イイよ?」


