「…玉子焼きおいしい?」
「別に、」
「そっか、」
へへ、と隣で笑ってみせるも内心かなり不安だったりする。
だってだってだって…!
初めての彼氏さんへの初めてのお弁当なんだもん。
…玉子焼きはちょっとだけ自信あったのにな。
「隼人くんて、お弁当の中身、何がすき?」
勇気を出して聞いてみた質問も。
「…特にはねー、かな、別にそんな気張らなくてもいいのに」
なんだかそっけない返事。
あんまり、お弁当おいしくなかったのかな。
「…、そ、うだね」
彼との会話はなかなか続かない。
もともと口下手なせいもあるけどやっぱり寂しかったりするわけで。
「今日、委員会?」
「あ、うん、放課後に美化委員会あるよ」
「じゃあ終わった頃に迎え行く。」
「へ、」
「何」
「…、あ、いやいやいや!!何でもないよわかりました!」
すっかりからになったお弁当箱。
あ、全部食べてくれてる。
「ふふ、」
「なんだよ」
嬉しくて、ついつい緩む口元に、高揚する気持ち。
赤くなった隼人くんはそっぽを向いてしまう。
「別にーっ!」
今度はあたしからの仕返しだもんね。
「今度、」
「…え?」
「グラタン食べたい、あったかいの」
「…へ、」
って今聞こえなかったよもう一回…!
「ごめん、なに?聞こえなかった!」
「別に。」
――「別に」
(さっきからそればっかり)
「(…結局なんだったんだろう。グ?具?)」