リビングに入ると、父が新聞を読んでいるのが目に入った。



母は慌てて、夕食の準備に取り掛かる。



「お父さんごめんなさいね…遅くなって…」



母が父に話し掛けた。



「どこに行ってたんだ?」



父が新聞を畳みながら、母に尋ねる。



母の手が止まった。



「桜ちゃんが…事故に遭ってね…それで病院に行って来た…」



母の言葉に父は驚きを隠せなかった。
目を見開き、新聞を畳んでいた手が止まる。



「桜ちゃんが…容態は…?大丈夫なのか!?」



父の声に力が入る。



「命はなんとか…でも…意識が戻らないかもしれないんだって…」



母がまた夕食の支度を始める。



「そうか…」



父が畳んだ新聞をまた広げた。



海斗は新聞を広げた父の手が震えているのが分かった。