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『悪いヒトだ、貴女も。俺が全て失うことも、貴女が全て失うこともご存知でいて、こうして手を出そうとするのだから』


冷たいブルーグレイの瞳が、ゆっくりと細められた。退廃的でモノクロな世界に、その色はとても美しい。

彼を前に、女は小さく震える。そっと宥めるように頬を撫で、落とされたキスは、すべてに反するようにとても優しいのだ。