―――
――





撮影がようやく片付いた頃には、既に深夜0時をまわっていた。

身体は疲れているのに、頭の中は妙に冴えていてすぐには眠れそうにない。


ホテルのバーカウンターでひとり、ウォッカマティーニで時間を潰していると、ぽんと肩を叩かれて振り向く。

そこには、ひとりの女性が立っていた。


薄化粧にして、シャネルの分厚いメガネフレームで顔を隠しているが、そこから覗く形の良いへーゼルの瞳ですぐにピンとくる。


『Hi!レイジ。こんなところで、ひとり寂しくお酒を飲んでいるの?』


ひとなつこい笑みを浮かべながら、小首を傾げるのは、この映画のヒロインを演じている、オリビア・ウッドだった。