すると、彼女はムッとしたような様子を見せて立ち上がる。
目線は、芹生と殆どかわらない。腰まであるブルネットの髪がさらりと零れ落ちた。
サングラスをゆっくり外し、醒めるようなブルーブラックの瞳が、真正面から芹生を睨みつけた。
「私、酔ってないでしょう?テキーラなんて飲みなれてるの。いいから構わず出してちょうだい」
「…はぁ」
小さく舌打ちして、彼女はまた席につく。
「素敵。性格の悪い美女」
マティーニに口をつけながら、秀宇が聞こえよがしにそんなことを言った。
店の時計を見れば、いつの間にか夜の11時をまわっていた。やはり、ここにいると時間が経つのを忘れてしまう。
「芹生、そろそろ会計を…」
その時だった。

