Paradise Jack


そうして、酔いがまわると共に夜も更けたころだった。

カランと、入店を知らせるベルが鳴る。


「いらっしゃい」


会釈もせずに入ってきたのは、すらりと背の高い女性だった。連れはなく、ひとりでさっさと俺たちとは逆の、壁際のカウンター席に座った。

女性にしては身長が高く、おそらく170センチ後半ぐらいあって、すらりと伸びた手足はまるでモデルのように長い。

ブルネットのロングヘアが美しい、オリエンタルな雰囲気の美女。


顔半分を覆うような大きなサングラスは、店内においてもはずされることはなかった。


「テキーラ」

「はい、かしこまりました」


にこっと微笑んで注文を受ける芹生。

整った顔立ちの芹生がカウンターに立つと、大抵の女性はその後ずっと彼を目で追ったり頬を染めたりするのに、彼女は一向にその気配を見せない。

珍しいこともあるものだ。