原稿も無事に受け取ったということで、俺とシュウは、いきつけのバーで一杯飲もうということになった。

部屋を出て階段を降りていけば、この小さなアパルトマンの管理人である薫子さんが、路地裏の落ち葉を箒で掃いていた。


「こんにちわ」

「あらシュウちゃん。お仕事はひと段落ついたの?シュウちゃんの連載、いつも楽しみにしてるのよ」

「嬉しい!薫子さん、どうもありがとう」


初老を迎える薫子さんの雰囲気は、いつも穏やかな春のようだ。シュウはこの家がとても気に入っていると口癖のように言うけど、それと同じくらい彼女が好なのだろう。

太陽が傾きかけて、オレンジ色に染められていく高台から伸びる坂道をくだっていく。


路地裏にある、いきつけの小さなお店。

『Bar Rokka Ballad』

と、レトロなフォントで描かれた看板には、すでに淡い光が灯っていた。