マスターと呼ばれる男が、人の良さそうな顔で口元に笑みを浮かべる。
シュウも芹生も絶対の信頼を置いているようで、ニコニコしながら彼を見つめている。
「三丘春海です。まさか、"あの"桐生怜二君に会えるとは思わなかったよ。君の演技がとても好きだから。今回の事件は、ほんとうに災難だったね」
「…ああ、はあ…。そうですね…」
「怜、と呼べばいいんだっけ」
マスターの言葉にハッとしてシュウと芹生を睨む。
しっかりとすべてを説明済みといった様子で、ふたりは慌てて俺から視線を反らした。
「ふふ、今日は随分豪華な顔ぶれだね。ベストセラー作家の小林秀宇に、ハリウッド俳優の桐生怜二か」
「……何言ってんですか。全部知っていてそんなこと」
今の俺は、役者でも桐生怜二でもない。
木本巧の下心顕わな薄汚い視線を思い出しただけで吐き気がした。思わずテーブルの下でぎゅっと手を握りしめる。

