足早に出口へとつながる階段を上がり、扉を閉めてハアと息をつく。
「…まじかよ」
まさか、静香と同じ会社の人間だとは思わなかった。
彼とは随分異なるタイプではあるけれど。
妙な焦りが生まれて、きょろきょろと周囲を伺う。
さすがに木本が追ってくるわけもなく、深夜の銀燦楼はまるで真昼のようなにぎやかさを見せている。周りの誰もが自分に夢中で、俺に視線を向けるものなどいなかった。
手早くタクシーを止め、桜海町へと戻る。
アパルトマンから少し離れた場所で降りて、この最低最悪な気分を紛らわせるために、唯一知っているバーへと向かった。

