Paradise Jack


「星と、ヒバリ社…」

「ああ、知っていてくれたとは光栄だな。あまり若い子向けの雑誌は出してないんだけど。あ、もしかして…、小林秀宇のファンだったりする?」


木本は何がおかしいのか、クツクツと笑いながら煙草を一本口に咥えて火をつけた。外国製煙草の独特の香りが鼻を掠める。


「以前は弱小の出版社だったが、今や飛ぶ鳥を落とす勢いだ。マネジメントに少々問題はあるけどね」

「"小林秀宇"のお陰?」

「否定はしないよ。彼女程、確実に部数を稼ぐ作家はなかなかいない。そしたら怜ちゃん、小林秀宇のサインを貰ってきてあげるから、この後もう一軒付き合わない?」

「結構よ」


その物言いに、なぜか心の奥がざわりと靡く。


「そっか、残念だ」


木本は、にこりと笑った。

酷く苛々して今度こそ振り返らずに店から出た。
背後にまだ、木本の粘着質な視線が張り付いているようで気持ちが悪い。