「…しずか、おはよう」 「ちっとも早くない。既に15時過ぎてますよ。原稿の出来はどうですか?」 のそりとシュウが起き上がると、ふわりと濃い酒の匂いが鼻を掠めた。またこのひとは、酒ばかり飲んで。 俺が顔を顰めたのなんて気にもせず、ベッドから抜け出した秀宇は、資料と書き捨てた紙でぐしゃぐしゃの机から、原稿の束を抜き出した。 今となっては珍しい手書きの原稿には、彼女の癖字がずらりと並ぶ。 何度かパソコンでの執筆を進めてみたものの、凝り性の彼女はガンとして首を縦に振ろうとはしなかった。