本名は知らない。 呼ぶときに困るから、わたしはそのとき吸っていた煙草の銘柄から勝手に"ナナ"と名付けた。 (彼は、女の子みたいだと苦笑いしていたけど) ナナはただ"逃げている"と言った。 色々な家を転々とし、ついに行き場を失ってあの公園にいたのだという。なら一緒においでと誘えば、単純に嬉しそうな顔で頷いた。 家族とか、年齢とか、そういうことには一切干渉しない。 わたし達はとてもシンプルに、雨に冷えた身体を温めあい、一緒にあたたかいスープを飲んだ。