あたしは口元を押さえていた手を見る。


「……」


 真っ赤に染まっている左手。


 あたしは、違和感のあった右手をゆっくり見た。

 何かを握っている……。



「……何、これ」



 赤くどろりとしたものが付いた、包丁?




 バッと手を離すと、パシャン、と足元の赤い海に落ちた。




「タカユキくん殺したの、お兄ちゃんなんでしょう? カズくんもお兄ちゃんが殺しちゃったの……?」



「亜季……守ってやれなくてごめんな」

 お兄ちゃんが悲しそうにあたしを見つめる。