「ふ~ん、逃げて行ったんだ」 お兄ちゃんがニヤリと笑ったように見えたのは気のせい? 「お兄ちゃん、トオルくんに何をしたの?」 あたしが聞くと、お兄ちゃんはあたしの目の前にやってきた。 「俺は何もしてないよ? 亜季の悲しむことなんて、するもんか」 そう言って、あたしを抱き締めると、また背中をポンポンと叩いてくる。 本当に? 本当に何もしてないの?