「今までどこにいたのだ？」
突然聞こえた響きのある声に二人は慌てて振り向く。

「！なんだ、イアンか……お父様かと思っちゃった～。」
レリンの強張った顔にホッとしたような笑みが浮かぶ。

そこにはレリンの双子の兄イアンが腰に手を当てて立っていた。

「くくく……けっこう似てただろ？？」
イアンが意地悪そうに目を細めながら笑っていると
「もう！びっくりさせないで！！でもほんと似てたわ～最近お父様ににてきたわね」
レリンは自分の兄の顔に父の面影を思い出された。

最近イアンは急に背が伸び始め、あまり変わらない高さだったレリンをゆうに越していた。しかしまだ成長しきっていない細いからだと幼さの残る顔はイアンを少年に見せた。

「皇太子殿下。何故このような場所におられるのですか？？」

イアンは８歳に皇太子という称号を与えられて以来、父の傍でその仕事振りを見たり、ときには父と一緒に書類を片付けたりしている。とにかく忙しいのだ……それでもってこんなところにいるはずがないのだが……

「疲れたからね、座りっぱなしも。最近は僕らのパーティーの準備で皆忙しくてね。なかなか稽古の相手がいなくて体がなまってしまうかと思ったよ」


「………………」

「………………」


「そのようすだと忘れてたみたいだね、二人とも」
イアンが軽く溜息をつきながら言った。