今の季節は春…

 にぎやかな城下町に見渡せば花壇、そして色とりどりの花たち。


  …美しい…なんて美しいのだろう。

  そして平和だ…

 
 行き交う人々を見ながら、たくさんの人の話し声、笑い声を聞きながら、レリンは思った…

 ここにはいつも来ていて、ぶつかる心配さえなければ目をつぶってさえ歩けるくらい見慣れた…
 なのに、何回来ても、何回もそう感じる…

 戦争が終わってから、15年…私が14歳だから、生まれた頃は、戦争から1年しかたっていなかった…でも、ほんの少しだけど、その頃の事は覚えている。
 私は、他の人より、少し記憶力が良いらしい…

 あの頃は本当にひもじかった……

 
 レリンはそっとため息をつく…

 あの状態から、こんなに平和にしてしまうなんて、


 …やっぱりお父様はすごい。


 ここにくるたびにいつも父の偉大さに感銘を受ける。







 「あ~!!姫様だ!!」

 「やあ、姫様。こんにちは。」

 「レリン様~お久しぶりですね!!」

 様々なところから声がかかる。レリンはその声に、1つ1つに笑顔で答える…

 もう何年もここにこうして通っている…

 最初は変装して身分を隠していたのに、結局見つかってしまい、城も城下町も大騒ぎになった…

 そのせいで、レリンは父王にも怒られ、双子の兄イアンにも怒られ、大臣にも専属の侍女にも怒られた。

 
 …しかし、そんな事で城下町に遊びに行くのをあきらめるレリンではない。
王や兵の目を盗んでは、たびたび城下町に遊びに行っていた。

 そうすると、レリンの存在に慣れ、親しく接してくれるようになった。



レリンは小さい頃から特別扱いされるのを嫌っていた。
「姫だから~」と言われ、行動を規制されるのが気にくわないのだ…

 だからレリンは、自分と普通に接してくれる人たちのいる城下町に来るのが好きなのだ。