「はぁぁぁ。」

私は物凄く大きな溜息を廊下で漏らしていた。

幸い今は、薄暗くなりかけた放課後の廊下だから良いものの、これが昼間の生徒がいる時だったら誰がどう見ても悩みを抱えた人か、疲れを溜め過ぎた人にしか見えないだろう。

「まったく!学級委員が休みだからって何で私に用事を頼んで来るのよっっ!!」


そう一人で言った後に自分が今日の日直だった事を思い出してなんだか すごく惨めな気持ちになって来た。

五月病というか、入学から一ヶ月半が経ち疲れが出て来た生徒達は次々と風邪で休んでいった。
抵抗力の落ちた体には
普段よりも風邪などになりやすいみたい。

それで、風邪をひいたのが学級委員と二人だったはずのもう一人の日直。
そして、それが今の私の状況の原因なのだ。

「本当ツイてないな。」

そう呟きながら
[帰ってよし]の言葉を 担任からもらって下駄箱へ向う廊下を私は
トボトボと歩いていた。



ようやく下駄箱に着いて自分の靴を取り出そうとした時…


「ねぇ。」


誰もいないはずの下駄箱から突如 響いて来た声に私はビクッと体を震わせてしまった。

周りをよく見渡すと、
すぐ近くの壁からスラッと伸びた長い足が見えていた。