「で?何の用?」
弟があたしの部屋に来ることは珍しい。
特別な用がないかぎり、来ることはない。
だからと言って、仲が悪い訳でも、思春期特有の複雑な気持ちとかどちらかにある訳でもないけれど。
ただ単に、あたしと弟は時間がないのだ。
特にバスケ部なんかに入部している弟は。
こうして昨日と今日はあたしと同じように丸々休みだが、その前まではびっしり練習が入っていたはずだ。
そうなれば、あたしとゆっくり話している暇なんかない。
「いや…やっぱやめとく!」
「何それ」
中途半端にされるのは嫌だ。
「…まぁ気をつけて」
陸は複雑な顔でそう言って、部屋を出ていった。

