まとまらない荷物と格闘していたら、あと一日弱あったはずの出発までの時間がいつの間にかすぐそばまで来ていた。
片付けだしたら止まらなくて、一睡もしていない。
「はぁー」
「ため息つくと幸せ逃げるよ」
深くため息をついたら、その後に1人のはずのこの部屋で、聞き慣れた声が聞こえた。
ごちゃごちゃした部屋から目をそらして、声のしたドアの方に向ければやはり弟の陸だった。
「いつからいたの?」
「ん?結構前から。
姉貴気づかないんだもん」
片付けに集中しすぎたみたいだ。
もっとも、この部屋の状況からして陸にはそうは見えないだろうけど。
「下で見張ってなくていいわけ?
どうせまたあたしの見張りやってんでしょ?」
今窓から逃げる気力なんてまったく残っていないけど。
「あ、バレた?」
「バレバレ」
「アハハ。ごめんごめん」
ばつが悪そうにしながらも、涼しげにヘラヘラ笑っている陸に軽く殺意が芽生えた。
こっちは大変な思いしてるっていうのに!
まったく、姉不孝な弟だ。

