「姫様、急いでくださいませ!カイル王子が見えたようですわ!」

中庭から戻った姫様を見つけるやいなや、侍女が慌てて話しかけた。

上機嫌だった姫様ですが、その顔には少し緊張の色が見えました。

姫様と侍女は急いで応接間へと向かいました。

「おお、ルシア、来たね」

応接間に着くと、バンダス王が真っ先に声をかけました。

「遅れて申し訳ありません」

姫様はそう言いながらドレスの裾を持ち、脚を曲げて挨拶をした。

そしてかちらを真っ直ぐ見つめる許婚、カイル王子を見上げた。

彼の顔を見て、姫様は今まで感じた事のないくらい胸が高鳴りました。

カイル王子は侍女の言う通り、とても美しく、優しい目をした方でした。

しかし姫様が惹かれたのはその容姿よりも、姫様を見るその表情でした。

何故かとても感動しているような、贈り物をいただいた時のような、とても嬉しそうなご様子でした。

初対面のはずなのに、なぜかそうではないような彼の雰囲気に、姫様は酷く動揺してしまいました。
カイル王子はゆっくりと姫様の元へと膝まずきました。

「お初にお目にかかります。サターニアのカイルと申します」

「こ、こちらこそ初めまして。ルシアです。遠路はるばるお越しいただきありがとうございます」

姫様は少し戸惑っていましたが、しっかり挨拶をお返ししました。