そうこうしているうちに夜はふけ、朝がやってきました。

ルシア姫は結局これといった案が浮かばず、朝方になってウトウトと寝てしまわれました。

姫が次に目を覚ましたのは侍女が扉を叩く音でした。

「姫様失礼します。おはようございます。そろそろ御準備しませんと間に合いませんわ」

「……行きたくない」

姫様はポツリと答えるのみで起きようとしません。

「姫様、お気持ちはわかりますが……」

「ホントに気持ちがわかって?」

突如としてルシア姫はベッドから起き上がり、侍女を睨み付けました。

侍女はまるで猛獣に狙われた兎のように縮み上がりました。

「じゃあ私の代わりに許婚に会って頂戴!そして結婚すれば良いんだわ!玉の輿になれるわよ」

「姫様、そんなこと出来るわけありません!」

侍女は泣きそうになりました。ですが言葉を続けます。

「姫様、サターニア王国の王子といえば、皆様整ったお顔立ちをしておられ、一際カイル王子はまるで天使と称されるくらいにお美しい方だと聞いております。それにとても心のお優しい方だとも聞きますわ。姫様の気持ちはよくわかりますが、一目お会いになってはいかがですか?」