あいつ、お人好しだな…。 携帯をポケットにしまい込んで、家を出て走り始めた。 …嶺北野球部のグランドへ。 夜八時を過ぎて、グランドは照明に照らされていた。 野球部の奴らが白球を追いかけている。 それを見ているやつが一人、フェンスにもたれ掛かっていた。 「苓那」 近付いて名前を呼ぶと、俺の方にゆっくりと振り向いた。 「なんでここに?」 「夕張から聞いた。お前に電話したのに、全然出ねーじゃん」 「颯太からの電話拒否ってたの」