「昨日、苓那から連絡があったんです。今からデートしないかって。」
「それで…?」
「一応待ち合わせ場所に行って、苓那に付き合ったんですが…。あいつ、すっげー悲しそうな顔、してました」
そして、こう続けてきた。
「俺、苓那のこと中学のときからずっと好きなんです。苓那の悲しむ顔、見たくないから…」
夕張…。
「じゃあなんで俺に電話を?」
好きなら、なんで。
俺から奪えよ。
「でも、それ以上に颯太先輩が好きっすから。」
「変なこと言うヤツ」
「昔から、プロに行った今でも俺の憧れは颯太先輩なんです。…苓那、多分嶺北野球部のグランドですよ。それじゃあ」
一方的に切られた電話からは、ツーツーという音しか聞こえてこなかった。