---甲子園予選
忘れるわけがない、あの試合。
「あん時から俺はお前が欲しかった。いや…お前のピッチングを間近で見たかったんだ」
「なんで地方大会を?」
「引退を考えてた。そのときたまたまお前の試合を見て、野球を続けようって…まだ頑張れるって思えた」
「俺たちの試合…」
「あの試合を思い出せ。ただがむしゃらに甲子園を目指していた、あの試合を」
甲子園予選、決勝戦。
あの日の俺の状態は最悪だった。
肩の痛み、試合中打球を受けた脇腹の痛み…。
それでも頑張れたのは、甲子園に行きたかったから。
甲子園にあいつを…苓那を連れて行きたかったから。