「・・・ふぅ・・・」

学校の玄関は、外とは違って暖かかった。

部活の朝練が終わってはしゃぐ、みんなの声が耳に響く。


騒がしい声。

でも、その騒がしさがとてもとても愛おしい。



がらら・・・

「あ、おはよう!由美香〜!」

「おはよー」

教室に入ると、ドアの近くの友達が声をかけてくれる。

でも・・・

その向こうにいる、椿は・・・ずっと窓の外を見つめたままで

私の方を、見向きもしなかったー・・・。



椿の後ろ姿を見るのが苦しい



やっぱり、昨日のことで傷ついてるんだ。

・・・少しだけ、期待してた。

昨日のことを、何も気にしてない椿が、私に笑顔でおはようって言ってくれる朝がくることを。


・・・でも、そんなわけ・・・ないね。



「おはよう」

「?」

後ろから誰かに声をかけられた。

「あ・・・土屋君!おはよう」


土屋君だった。


・・・土屋君は、昨日の出来事をまるで覚えていないかのように冷静でいた。


・・・彼なら、助けてくれるだろうか。



さっさと自分の席につこうとする土屋君の制服の裾を、優しく掴んでみた。