「親父が菜月さんに謝りたいって言ってるけど、家来れる?」



急にコーヒーカップに向いていたその茶色い目をこちらに向けた。

その目はこの前お父さんを見た目とは違った。

こんな目で見つめられたら、気がどうかなってしまいそうだ。



「いいよ。親に連絡しとくね。」

白い携帯を鞄から出してカチコチした。
携帯をいじっているときに孝之くんの目線がこっちに向いてるんじゃないかってドキドキした。

喫茶店に流れる曲が途切れた時に心臓の音が聞こえるんじゃないかってひやひやした。

全部の気持ちが新鮮で菜月は嬉しかった。




「オレ、払うよ。」

一歩あたしの前に出てお財布を取り出すので負けずとあたしも孝之くんの前に出た。

「一応あたし年上だもん。それにバイトしてるんだよ。あたしに払わせて。」

孝之くんのお財布を押しのけて自分の財布を出した。

彼も意地を張って割り込んでくる。

「オレは男なんだぜ?払って当然だろ?」

「それは孝之くんの両親のお金でしょ?ダメだよそんなの!あたしはあたしのお金だからあたしがっ…。」

「オレがっ…。」

「あたしがっ…。」






チーン。

ありがとうございましたぁー!
という定員の声が響く。

激しい討論の末、割り勘となった。