月の光があたしたちをまた一段と照らしてくれた。

結局彼があたしを送ってくれることになった。

「やっぱ男はこうだよなー。」
とか言いながら。

孝之くんのお父さんはあたしを殴ったことで正気になり、今は反省してるという。

今度彼の家に招かれることとなった。




人はそれぞれ何かのリスクを背負って生きている。

それがどんなに重い荷物でも付き合っていかなきゃいけない。

どんなに苦しくても、逃げることなんて出来ないんだ。

孝之くんは自分の生き方を知ってる。


「オレ、泉坂高校に行くのを親父にちゃんと話すんだ!それで認めてもらう!」

うん、と頷いてまた歩いた。


彼と出会ったことで何か変わるかもしれない、そう思った。



「あのさ。」

家の前に着いた時に孝之くんはポッケから何かを取り出した。

薄い真っ黒の携帯。

「連絡取りたいし…。」

うつむきかげんで言った。

「うん。」

薄い真っ白の携帯を取り出した。

まぶたが重かった。