冬のための夢

ベンチから立ち上がった二人は、サル山を見た。

その時、守は自分の子供の頃の話を彼女にした。

「昔ね、犬を飼っていた事があったんだ。クロって言う名前の雑種だったけど、僕になついてね、7年間、一緒だったんだ。でもね、8年目のクリスマスの夜に死んじゃったんだ。その時、僕は初めて知ったんだ。失うって事を・・・。
だから、その時以来思ってるんだ。初めから何も無いんだって・・・」