冬のための夢

1時間も歩き守はベンチに座った。

女の子も守と同じベンチに座ってくれた。

沈黙・・・。

守は話した。

「こんなふうに呼び出したってことはやっぱり、まずかったのかな?」

女の子は無言で俯いたままだった。

「心配することはないよ。誰にも言わないからさ」

彼女は氷で固まったかの様に、体も心も動かさなかった。

「寂しかったんだ・・・、俺。二年も大学に入れなくてさ、友達はみんなどっかにおさまってさ、俺だけ一人で生きてるんだ。話せる奴なんて誰もいない!!」

守は初めて本当の事を話した。

遠くで、動物の鳴き声が聞こえた。

女の子は初めて守の顔を確りと見つめた。でも、今度は守が俯いていたので守は彼女が見つめている事が分からなかった。女の子は自分の気持ちを言葉にしてみた。

「でも、あなただけじゃないわ」

「えっ?」

氷が溶け出した。

「ねえ、残りの動物、見ない?」

女の子はベンチから立ち上がった。