冬のための夢

守が移動すると、間隔を開け彼女も動いた。

しかし、女の子は決して守の顔を見ようとはしなかった。ただひたすらうつ向いていた。おそらく楽しくないのであろう・・・。

いくらか愛想がいい熊の檻の前に立つ。
熊は檻の端から端を何度も往復していた。熊は途中立ち止まり悲しい目を守に見せた。
熊を見ていると、その姿はアパートにいる自分の姿にも思われた。悲しくなった。

守は動物園に入って初めて心を奪われた。

注目して、熊を見ていると視線を感じた。

振り向く守。

女の子が守を見つめていた。

「えっ?」

不意打ちだった。

思わず笑顔を作る。