気がつくと、自分の家の前にいた。

カギを使い、ドアを開ける。

目の前には木彫りの熊の彫刻がある。全く変わりのしない玄関先。

母の声が聞こえてきた。
 
「おかえりなさい忠士。今日ね、ドーナッツ買ってきたの。食べる?」

「あー、うん、今はいらない、後で食べる」

忠士は靴を脱ぎ、逃げ出すように、自分の部屋へ入って行った。

こんなふうにしか母と向き合えなくなって、一体どのくらいの月日がたったのだろうか?。

きっと母も同じ事を考えため息を漏らしているのだろう・・・。