「そっか、いいね」

そう言った翔さんの笑顔は
とても寂しく映った。

「翔さん、、今、彼女は?」

「、、いる、かな」

「かな、って」

「ごめんごめん。いるよ」

また、ふわりと笑う。
掴みどころのない人だけど、この人の笑顔は嫌いじゃなぃ、と思う。

「、、じゃぁ、そんな寂しそうな顔、しないで下さいよ」

「何で。惚れちゃう?」


その言葉と同時に

翔さんの整った顔がすっと近づいてきて あごを持ち上げられた。

「ちょっ、やめ」

「ね、司って沙夜ちゃんの何?」

翔さんの吐息が掛かる。


「、、それは、、」

頭がぼうっとして
何も考えられなくなった、その時。


―「沙夜ーっ」

司の声がした。


「王子様が迎えにきたね」

そう言って翔さんさんは手を離した。

私は急いでその場から立ち去った。


背中で


「嫌になったら俺のとこおいでー」

って 翔さんの声がした。


無視して走ったから その後に言った言葉は聞こえなかった。


―「彼女なんか、いないんだから。」