小悪魔な君に天使のキスを


―「それでねっ―、、」


隣で嬉しそうに喋る蘭。

でも、ごめんね、蘭。

正直それどころじゃなかった。

柊樹は、どぅしてぁたしに1人で帰るなって言ったんだろぅ。

もしかして、心配してくれた、、とか。

それなら、まだ望みはぁる、、のかな。


そんな淡い期待を捨てきれない、バカなぁたしだった。



「ね、沙夜は、きゃぁっ!?」

「蘭っ!?ぃやっ、、」

一瞬だった。

覆面をした黒づくめの男が数人。

気付けばぁたしと蘭は

目隠しとさるぐつわをされて車の中に押し込まれていた。




―ドサっ、、、

乱暴におろされて、目隠しが外された。

見えた光景は、、、

廃工場。

そして

信じられない人の姿。

「ふほ(うそ)、、」

けれど現実は残酷で。

「柊樹っ!」

愛しい人の名を呼ぶ妃奈が来た。

覆面を取った男達の顔には見覚えがぁった。


―柊樹と、、出会った日のナンパ男。

私を助けてくれた後、ぁなたは“偶然”通りかかったから、って言ったけど

ぁれは必然だったの、、?

「ふんっ、、いい気味ね」

妃奈が吐き捨てるように言う。

「柊樹はね、ぁんたなんか始めっから眼中に無いのょ!!欲しいのは金。そして、柊樹の隣にいていいのは私だけょ」

そう言う妃奈の意地悪な目には、ハッキリと嫉妬の炎が見えた。


「、、ヤれ」


まだ信じられない柊樹の言葉。

けれどその言葉を待っていたかのように、男達が動き出す。


―嘘でしょう?

嘘だょね?

柊樹のぁの笑顔は嘘だったの?

妃奈の涙は?

、、ぁのキスも?


全部、ぁたしだけが騙されて、浮かれてたの、、?


ねぇ柊樹

嘘だと言って、、?


ぁたしの切実な願いは

目を逸らされて砕け散った。


馬乗りになった男達には何も抵抗できず

最後に見えたのは

廃工場をでていく柊樹の悲しげな顔だった。