小悪魔な君に天使のキスを




「…司」

トントン、、

「ねぇ?」

トントン、、

「司、っ」

トン、トン、


テンポが崩れ去る。

もう、終わりなの?


50回のノックの後、

空間が凍った。


「、っ、、」

沙夜の涙の声がかすかに聞こえて。



俺は、反射的に扉を開いた。

開いて、しまった。


「、、司」

「何?」

自分の声に驚く。

こんなに冷たい声が、あったんだ…。

「あの、ね」


「っつーか、何?さっきから。うるせぇーんだけど?」


「、っ!!」

沙夜の涙なんて、見えない。

沙夜の声なんて、聞こえない。

沙夜の瞳なんて、見つめられない。


「話って何?…別れたいの?」


ふざけんな。

なんだよ、これ。


自分にも、イラつく。


でも、何よりも。

何も言わずにただうつむく、


沙夜の方が何十倍もイラついた。



何十倍も傷付いた…――