「挨拶にでも……行こうかな」
ベランダから外を見ながらそう呟く。
犬の散歩をしてたら偶然会って「初めまして」っていう感じでいけば自然だよね……!
思ったら即行動に移す。
「犬の散歩行って来まーす」
そう言いながらベランダから自分の部屋に戻り、勢いよく階段をおりる。
「ふぎゃ!?」
最後の一段を踏み外したのは気にしないって事で。
我が愛犬、ラナにリードをつけ、ドキドキしながら散歩に行く。
そして、普通の散歩をしているように、新しく越してきた家の前を通る。
でも、家の中にいるからなのか、外には引っ越し屋の人しかいなくがっかりした。
「ラナ、行こうか」
その瞬間、ラナの様子が一変した。
ラナ自慢のふさふさのシッポをぶんぶん左右に振り始たのだ。
すると、そこに大人の人がやってくる。
知らない人、引っ越してきた人だと一目で分かった。
ちゃんと挨拶しなきゃ……。
「おはようございます……」
あぁ、失敗した。
もう少し明るく言えばよかった。
すっごく優しそうな人なのに……。
