〜♪
日曜日の朝9時。
私が一番寝ていたい時間に携帯の着メロがなる。
もちろん不機嫌MAX。
「もしもし……」
朝から誰よ、もう。
不機嫌だと分かるくらい、低めの声で言う。
「あー、起こしちゃった?」
ええ、はい。起こされましたとも。電話で。
……というか、誰?
「誰?」
「はぁ?!都賀だよ」
寝起きだからか、誰だか本当に分からなかった。
都賀かよ……。
都賀というのはクラスメイト。
もう一度言う。ただの、クラスメイト。
席が近くなったのをきっかけに最近話すようになった。
本名は、都賀彰人。いつからか分からないけど、ずっと都賀って呼んでる。
都賀朝起きるの早すぎだよ。
「あぁ、はい。なんですか朝から」
こんな言い方だから絶対と言っていい程、都賀に
「朝弱い!!」と言われる。
分かってるんだったら朝電話してくるなって思うんだけど。
「今日遊べるかなって」
えー、日曜日なのに??
家でごろごろした〜い。とは言えず。
正直な所、都賀と遊ぶのは楽しいし、断る理由はない。
遊ぶと言ってもゲームしたり共通の趣味の話題で話したり。
なんていうか、普通の友達みたいな関係。変に意識しないしね。
「いいよ。家おいで」
「了解、さんきゅーな。10時頃平気か?」
10時……、ちょっと早い気がするけどまあいいか。「どうぞ」
「じゃあ行くから、またな」
言うだけ言って、電話を切られた。
一気に目、覚めた……。
とりあえず着替えなきゃ。
そう思ってクローゼットを開ける。
秋というもの、まだセミの鳴き声がうるさいしすっごく暑い。
残暑ってやつ?
まだ9月だからっていうのもあるかもしれないけど。
適当に、紫のワンピースでシンプルに……って、何で都賀と遊ぶだけなのにワンピースなんだよ!!
と自分に突っ込みを入れる。
しかも紫……。
この前都賀が「紫って、欲求不満を表してるんだよ!」とか意味の分からないことを言い出したっけ。
……忘れよう。
紫、かわいいもんね……。そして結局着ることにした。
「んーと、鏡……」
部屋の隅にある鏡を見てにらめっこ。
「変じゃない……よね?」
一人ファッションチェックとか寂しい。
姉に聞こうと思ったが姉はまだ寝ている。この姉……、朝帰りなんかして!!
姉にひそかにキレていると、外がなんだか騒がしいことに気づく。
ベランダに出てみると、遠くに引っ越し屋のトラックが見えた。
引っ越し……? あ!
そういえば少し前、新しい人が引っ越してくるっていう噂あったっけ。
今日だったんだ。
暑い中ご苦労様ですこと。
他人事のように思えて実はそうでもない。
もしかしたら、同級生がいるかもしれない!!転校生との恋とか生まれちゃう?!
漫画の読みすぎなんだか、発想力が豊かな私。
そもそも同級生なんて決まったわけじゃないのに。しかも異性なんて決まったわけじゃ……。
でも、興味はある。
絶対、新しい出会いがある。そう勝手に信じ込む。
「挨拶にでも……行こうかな」
ベランダから外を見ながらそう呟く。
犬の散歩をしてたら偶然会って「初めまして」っていう感じでいけば自然だよね……!
思ったら即行動に移す。
「犬の散歩行って来まーす」
そう言いながらベランダから自分の部屋に戻り、勢いよく階段をおりる。
「ふぎゃ!?」
最後の一段を踏み外したのは気にしないって事で。
我が愛犬、ラテにリードをつけ、ドキドキしながら散歩に行く。
そして、普通の散歩をしているように、新しく越してきた家の前を通る。
でも、家の中にいるからなのか、外には引っ越し屋の人しかいなくがっかりした。
「ラテ、行こうか」
その瞬間、ラテの様子が一変した。
ラテ自慢のふさふさのシッポをぶんぶん左右に振り始たのだ。
すると、そこに大人の人がやってくる。
知らない人、引っ越してきた人だと一目で分かった。
ちゃんと挨拶しなきゃ……。
「おはようございます……」
あぁ、失敗した。
もう少し明るく言えばよかった。
すっごく優しそうな人なのに……。
「あ、おはよ……」
やっぱりいきなり迷惑だったよね……。
優しい顔してるのになんだか不機嫌そう。
「……」
沈黙が痛い。
何か話題……話さないと。
「犬……」
「ほえ?!」
ほえって何だよ私……!! もうやだ逃げたい。
「犬、かわいい」
クスっと笑いながら言う。
……あれ、笑顔なんだか幼い?
というか、笑ったのって何で?!もう恥ずかしすぎる。
「あ、ありがとうございます。よかったね、ラテ」
ラテを連れてきてほんとよかった〜っ
ラテが天使に見えたよ。
「ラテっていう名前なの?」
「はい!」
はい!ってどこの小学生ですか私。
元気いっぱい返事しました!みたいになってる。
「ラテって可愛い名前だね、えっと……君は?」
ニコっと笑う。
笑顔かわいすぎるんだけど……。
「私ですか?私はゆあ。佐倉ゆあです」
少しは大人っぽく言ったつもりなんだけど、最初の「ほえ?!」を聞いてるし意味ないよね。
「ゆあちゃん、ね」
「ちゃんいらないですよ〜、お兄さんはなんていう名前なんですか?」
お兄さん、と言った瞬間、顔が少し赤くなる。
え!?なんで……?
「僕は海(カイ)。あ、お兄さんとか照れるから……顔、見ないでね?」
海さんっていうんだ。
笑顔が可愛い海さん、っていう所かな。
残念ながら顔が赤いの知ってます。
「お兄さんっ」
「やめて〜、恥ずかしいって」
少し意地悪して呼んでみる。
海さんってMなのかな……、すっごい年上だと思うんだけどいじりたくなっちゃう。
「あ、海さん」
「え?」
顔が赤いのを必死に隠しながら答える海さん。
「海さんって、何歳なんですか?」
一番疑問に思っていた事を聞いてみる。
「僕?18だよ」
え……えぇぇぇ!?
4歳も年上だったなんて!
軽々しくお兄さんなんて呼んじゃって……!!
ちょっと意地悪しちゃってごめんなさいっ!
「18ですか!?なんかごめんなさい馴れ馴れしくして」
どっちにしろ、初対面の人に馴れ馴れしすぎである私。
焦りながら言う私に、海さんはまたクスっと笑う。
「いいよいいよ。ゆあは14歳ぐらい?」
ぴったりです、海さん。私14です。
「14歳です、海さん当てるの得意ですね」
「えぇ!?本当に14?12ぐらいだと思ってたわ!!」
海さーんッッ
私そんなに幼いですか……。
「本当に14なのに!」
「やっぱりゆあ面白い。嘘だよ。ちゃんと12……じゃなかった14歳に見えるよ」
「本気にするとは思わなかった」とクスクス笑う海さん。
「ってことは中2かな」
笑いが収まったところでそう聞いてくる。
「あ、はい」
「じゃあ、僕の妹と一緒だ」
妹さん……!!
仲良くなれるかなぁ、家近いし一緒に学校行ったり……とか出来るかな。
「妹さんに、よろしくお願いしますって伝えてください!!」
早く妹さんにも会いたいな〜と思ってた時。
「ちゃーっす」と聞いた事のある声がした。
「都賀ちゃらいんだけど」
「うるせぇ」
小さい声で言ったはずなのに、何故か聞こえてたらしく怒られた。
「せっかく海さんと話してたのに!」
半分冗談で言ってみると海さんは焦っているように見えた。
「僕、お邪魔かな」
何を言い出すんですか海さん……!!
海さんがいて楽しくなってたのに。
「お邪魔なのは都賀なんで大丈夫です」
そんなことを言うと、いつのまにか自転車をおりていた都賀が私の所にきて頭をベシベシ叩く。
ちょっと痛いんですけど。
「邪魔ってなんだよ」
声のトーンが低い。都賀本当に怒ってる!?
ひいぃっ、怖いよ。
「ごめんなさいッ」
謝ると、「はぁ」とため息をつく都賀。
一応叩くのはやめてくれた。
「仲良いね、付き合ったりしてるの?」
海さんがいきなり意味の分からないことを言う。
こいつ……都賀と付き合うとかまじありえないから!!
「俺だってイヤだわ」
そんなことを言う都賀はちょっと悲しそうな感じがした。
……ような気がした。
でも、低い声でそう言われるとさすがに多少落ち込むんですが。
しかも、「俺だって」と言っていた。私の心読まれてる……!?勘弁してよっ
「私はね、もっとかっこいい人を彼氏にするの!!都賀なんてイヤ!」
「うるせぇよ!!それはこっちの台詞だ」
「はぁ?都賀、かっこいい人と付き合うの!?」
「意味の分からないこといってんじゃねぇ!」
完全に口喧嘩。
私は怒ってないけど、都賀の目が軽く本気だよ……!!
そんな口喧嘩を止める海さん。
「まぁまぁ、落ち着いて」というなんともベタな台詞。
でも、海さんらしい気もした。
「はい……」
海さんのお蔭で、呆気なく口喧嘩終了。
「うん。偉い偉い」
なんだか海さんが私達を小さい子を見るような目に変わった気がした。
偉い偉いですか、と言いたくなる。
「海さんって言うんすか?」
都賀がちょっと不機嫌そうに言う。
都賀ぁ!海さんにそんな態度とらないでよ!!と言いたい。
「うん。上野海」
海さんは海さんで態度が冷たい。
なんでこの二人仲悪いの〜!?
「んじゃ海さん。ゆあ連れていきますんで。」
……!?
いきなりの都賀の言葉にびっくりした。
なんで名前呼び!?
いつも名字なのに……っ
しかも海さんに失礼じゃない……。
「ゆあ、行こう」
そう言って私の腕を掴み、自転車がとめてある所に行く。
都賀の力が強い……。
「都賀!」
「乗せてくから早く乗れ。犬は前のカゴに入れていいから」
声のトーンは低いまま。
それに私の言葉は無視ときた。
乗せていくって、自転車に二人乗りってこと?
都賀、そんなに体力あったっけ……。
多少不安な面もあるけど、荷台に乗り、都賀にしっかりつかまった。
「いくよ」
暑い中、バランスをほとんど崩さないで自転車をこぐ都賀。
なんでそんな声は怒ってるくせに態度だけは優しいのだろう。
しかし海さんには悪いことしたよね。
私の頭の中は謝らないと、という気持ちでいっぱいだった。
