「おい、起きろよ。先生こっちきてるぞ。」

 隣の席の女子をペンで突く。

「んー……」

 効果は虚しくも少し身じろぎしただけだった。腰まである髪がそれに合わせて揺れる。先の方を白に染めているせいか、猫の尻尾を連想する。

「すみません、先生。純色(スミシキ)さんが体調不良なので保健室に連れていきます。」

 口早に言うと僕は純色 黒架(スミシキ クロカ)を無理矢理立たせて教室を出る。行き先は保健室なんかじゃなくて、普段は立入禁止の屋上。僕と黒ちゃんのお気に入りの場所。

「しろー…眠い……。」

半分僕に引きずられる様になりながら、寝ぼけ眼の黒ちゃんは寝言もどきを言った。僕は「うん、知ってる。」とだけ言った。